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野村や東京海上とともにワンビシの高沢社長も出資する予定で、現在の経営陣が参画する企業買収(MBO)としては国内最大となる。 MBOの対象は文書保管業で国内3割のシェアを持つワンビシアーカイブズと、生命保険の有力代理店などを手がけるワンビシ産業の2社。両社とも業績は安定しているが、財テクの失敗で計約870億円の借入金を抱え銀行管理下にある。 買収に際してはまず東京海上キャピタルが運営する投資ファンドと、野村プリンシパル・ファイナンスなどの出資で受け皿会社を新設。この新会社が銀行借入も利用して計500億円を調達、ワンビシ2社から文書保管業と保険代理店業の営業譲渡を受ける。 新会社は従業員も継承するが、ワンビシ2社の既存の負債は引き継がない。
スキームの実行により旧会社は新会社からの営業譲渡代金を受け取る。これで銀行に借入返済をするのだろうが、なお370億円(870億円−500億円)の借入が残る。旧会社はその後も何らかの事業を継続するのか、それとも清算するのか不明だが、残債の返済能力がほとんどないことだけは確かだろう。 過剰債務企業の整理のパターンを目的で大別すると、再建型と清算型とに分けられる。さらに、手続きに着目すると関係者の話し合いによる私的整理と裁判所が関与する法的整理とに分けられる。 記事のケースは再建型の私的整理である。債権者・債務者双方にとって最も望ましいパターンである。
過剰債務企業は放っておけば倒産する。本業が好調だとしても、儲けは元利の支払に消えてしまう。設備投資や研究開発をしようにも、新規の借入が困難なためままならず、事業の競争力も落ちていく。結局、事業は行き詰まる。 こうなると、銀行は会社の資産を安値で叩き売るしか債権回収の途はなくなる。したがって、事業自体は好調なら、事業を継続させて収益弁済を受けた方が銀行にとっては回収額が増えることになる 。なお今回は、営業譲渡により将来の収益弁済を一括して受けた恰好となっている。 さらに、事業を継続させるならば私的整理の方が望ましい。法的整理(民事再生法など)を選択すると会社は信用を失い、事業価値が大きく毀損する。私的整理も法的整理も債務整理という点では倒産処理に違いはないが、対外的な影響・イメージは大きく違う。 (たとえば先日、西武百貨店が債務免除を含む「私的整理」を行なったが、「倒産」とは報道されない。もし、民事再生法の申し立てをしていたら、世間のイメージやその後の集客は大きく異なっているだろう。)
まず、投資ファンドというリスクマネーが投入される点(西武をはじめ多く例では、銀行の金融支援という消極的な整理にとどまる)。これは裏を返せば、それだけ事業に魅力が高いということだろう。 投資家からすれば、今回のように本業以外で不振に陥った会社というのはいちばん「いい買い物」ができる 。企業全体としては不振なわけだから、安く買い叩ける。一方、順調な事業だけ切り離せばリスクは低く、高いリターンが見込める。 また、事業会社ではなく投資ファンドが出資している以上、投資回収の方法(EXIT)を考える必要がある。方法としては株式公開か、M&A(事業売却)だろう。いずれにしても、過剰債務や不採算事業の存在は障害になる。それらは 営業譲渡により分離してキレイなからだにしておく必要がある。 さらに、買収額が500億円と高額にのぼっているため、投資家が全額リスクテイクするのは難しい。そこで、銀行借入を利用することでレバレッジを利かせている(少ない 自己資金での買収を可能にしている)。 (こうしたケースでは無担保融資が常だが、会社の事業を考えると不動産もかなり所有しているはずだから融資の上積みも可能だったのではないかと思われる。逆に言えば、不動産があった分、買収金額がかさんだ面もあるかも知れない。)
今回の話は経営陣から持ち込まれたのかも知れないが、投資家サイドから見て事業自体が順調であれば、経営陣を替えて徒らに社内の動揺を招くことは適当でない。むしろ、経営陣にも出資をしてもらい、社員にストックオプションを付与することで 、株式公開を目指して士気を高めてもらう方が得策だ。 最後に銀行にとっても、損失が確定してリスクから解放される。さらに旧会社が清算でもすれば、いわゆる不良債権の最終処理 (バランスシートからの切り離し)が実現する。
こうした円満な私的整理の例は実際には少ない。記事のように本業自体は圧倒的な競争力を持っているなら、バランスシートをきれいにすればこと足りる(それとて簡単ではないが)。しかし、多くの不振企業は本業自体に問題を抱えている。ダイエーの例で分かるように本業建て直しの道のりは険しいものがある。 ■経営不振の元凶が本業以外にあるのなら、それら(過剰債務や不採算事業)を切り離すことによって企業・事業の再生は見えてくる。 |
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