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同社の債権プロセスは注目に値する。再生期間が113日と素早いだけではない。資産売却など事業のリストラにも手をつけなかった。秘けつは破たん前交渉にある。 チキータは破たん前申請時に、社債権者との合意に達していた。総額7億ドルに上る元利支払いを免除する代わりに、会社再建後に発行する新株の95%を受け取る。経営を圧迫していた負債は6億ドルまで削減、再建の青写真はできあがっていた。 「プリパッケージ倒産」。チキータが活用したのは米国に10年以上根付く制度だ。これを可能にすべく常に2人の黒子が陰で走り回る。弁護士と投資銀行だ。 米国では例えば半年先の社債償還のメドがつかなくなると、企業が弁護士や投資銀行に接触する。助言を求められた専門家は問題がどこにあるのかをまず調査。そのうえで法的整理や私的整理などの解決手法を煮詰めていく。 さらに、再建手続き中に運転資金を出す金融機関や再建後の取引銀行も探す。企業再建分野での分厚いノウハウと幅広い人脈を活用して再建シナリオを迅速に固めていくわけだ。 企業再生の最大の難関は債権者との交渉にあるという。再生計画に合意が得られなければ会社は最悪、清算を迫られる。プリパッケージ倒産へ持っていくには、申請時までに大半の同意を得る必要がある。 スピード再建のおかげで、取引先が逃げることもなかった。−−2000年9月、約2ヶ月間で再建手続きを終えた米中堅スーパーの幹部は「プリパッケージが我が社を救った」としている。
ただし、倒産は「計画倒産」であるべきだ。もちろん、いい意味での「計画」だ。 倒産にもいろいろある。いい倒産もあれば、悪い倒産もある。極端な例で言えば、いい倒産とは迷惑をかける人が少なく、事業を再建して少しでも関係者に恩返しができるもの。一方、悪い倒産とは倒産処理もままならず夜逃げをし、挙句に 特殊債権者から「追い込み」をかけられるものだ。 いい倒産と悪い倒産を分けるポイントはいくつかある。いちばん大事なのは計画であり、準備だ。しかもできるだけ早いうちから対策を考えることだ。
こうした案件にも2つのパターンがある。1つは資金繰りが煮詰まってどうにかならないかという案件。もう1つは債務超過ではあるが事業を活かす道はないかという案件だ。 前者のケースは、大抵1ヶ月以内の資金繰りのメドが立たない状況で話が来る。たとえば、「2週間後の手形が落ちないと言ってる会社があるんだけど、行って見てやってくれないか」と 案件が持ち込まれる。 こういったケースはとにかく目先の支払日を乗り切らなければならない。資金調達をするにしても、支払のジャンプをするにしても、相手との交渉ごとだから時間が必要だ。結果としてなんとかなるケースもあれば、時間切れに終わるケースもある。いつも、せめてもう少し前に相談してくれればと思う(身近に相談相手がいなかったのだろうが)。
一方、目先の資金繰りに追われてしまうと抜本的な再建や営業活動など前向きなことができない。その結果、いつまでたっても資金繰りは改善せず、そのうち筋の悪いところから借入をしたりする。こうなると出口はほとんど見えない。 企業が経営不振に陥ると、時間ともに再建の可能性は小さくなる。さらに事業を清算するにしても、決断が遅れるほど関係各位に多大な迷惑をかけることになる。個人としても社会的に再起不能になる危険性が高まる。
特に資金面の準備。まず、裁判所への予納金をはじめ法的な倒産手続きをするにはおカネがかかる。加えて、法的手続きを申し立てたら掛での仕入れはできなくなるから、運転資金を確保する必要がある。どんづまりの状況では法的整理もできないのだ。 このほか運転資金の確保にも関連するが再建を支援してくれるスポンサーを見つけておく必要がある。もちろん時間のかかる話だし、支援に足るだけの事業基盤が残っていないといけない。
さらに法的整理を申し立てると企業の信用は毀損し、従業員・取引先も大きく混乱する。それらを抑え、円滑な事業継続を図るためにも事前にしっかりとシナリオを用意しておく必要があるのだ。 ■企業の倒産・再建には早いうちからの準備と対策が必要だ。時間の経過とともに打つ手が少なくなり、不幸な結果を招くことになる。 |
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