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和光電気は今年4月28日、約300億円の負債を抱えて大阪地裁に同法の適用を申請。同5月12日に再生手続き開始決定を受けた。 社長は同社の負債のうち、221億円を個人保証しており、個人としても同法適用を申請し、同社と社長は地裁から財産の保全命令を受けた。 捜査二課の調べなどによると、社長は同法を申請した4月28日の前後に、NTTやシャープの株券、現金1500万円を取引先の証券会社から引き出していた。 同社長は再生手続き開始決定後の今月2日から5日の間、地裁が選任する監督委員に報告しなかった銀行口座から現金約1700万円を引き出した。 社長は、「自分の利益のために隠した」などと容疑を認めているという。
1つは、危機的状況を真正面から受け止め過ぎてしまうパターン。もう1つは、ごまかして状況から逃げ切ろうというパターン。 最初のパターンの極端な例は、支払・返済をすべて期日どおりにまっとうしなければとの考えから、体力を超えて約定どおりに借入返済を進めて資金繰りに窮し、最悪のケース、罪悪感から保険金を支払に充てるべく自殺をしまうものだ。 (ちなみに、「保険金自殺」の多発から「保険契約後1年以内の自殺は保険金支払をしない」という約款が今では2年に延長されている。また、契約後1(2)年を超えての自殺でも、契約時に自殺による保険金取得を目的としていた場合には保険会社に保険金支払義務はないとの高裁判決も出ている。 もとより、保険金自殺など考えるものではない。)
どんなに頑張っても返しきれないほどの借金を抱えたとき、人間は「どうせ、この会社で頑張っても意味がない」と思い始める。そして、別会社を作り、まっさらな「第二会社」で商売をするようになる。もとの会社は破たんさせるなり、細々と営業するなり、休眠会社にしたりする。 保険金自殺もそうだが、「第二会社」も増えている。法律的には、第ニ会社を作ったところでもとの会社の債務についても追求を免れず、かえって債権者の関係を悪化させるだけだ(なお、債権者の同意を得ながら実施する私的整理としての「第二会社」もあるので、第二会社方式のすべてが批判の対象になるものでない)。 むしろ、再建可能性があると信じるなら、きちんと私的整理なり法的整理をして「合法的に」債務カットを受けた方がした得策なのだが、それを選択する人は実際には少ない。これには、本人の性格以外にも次のような背景がある。
経営者からすると自分の個人資産まで追求されるのはまだしも、連帯保証人にまで迷惑をかけるのは忍びない。法的整理を選択すれば、連帯保証人にも類が及ばざるを得ないので、法的整理を選択したくてもできない。 とりわけ、親の不動産が担保に入っている場合にはなかなか合理的な割り切りはできない。 このほか、日本全体がモラルハザードに陥っているという状況もある。 大手ゼネコンは銀行から巨額の債権放棄を受け、その銀行は公的資金で助けてもらう。まじめに借金を返すのが馬鹿らしくなるのも当然だとも言える。 もう1つ指摘できるのは、法の無知だ。 世の中、「倒産」に詳しい人など少ない。倒産と聞くと、身ぐるみはがされて一生路頭を迷うようなイメージが先行してしまう。しかし、実際には正しく対応すれば生活は保障される。法的整理を申し立てることは、法律に守ってもらうことを意味する。
また、常ならぬ状況に置かれたときには弁護士をはじめ専門家にきちんと相談すべきだ。素人考えで「うまくやろう」としても、所詮その場しのぎで穴だらけのことしか考えられない。逆に、1人で思いつめても、余計なことを考えるだけだ。専門家や法律に守ってもらえることを忘れないでいただきたい。
ものごとは落ち着くところに落ち着くようになっている。ごまかそうとすれば後で咎めを受けるし、過度な負担からは法律が守ってくれる。難局に陥ったときは、自分がバランスの取れた判断をしているか自問自答し、信頼のおける人に意見を求めることが大切だ。 ■企業が経営危機など常ならぬ状況に置かれたときは、専門家の意見を聞きながら筋のとおった解決策を目指すべきである。 |
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