(A)資金は、使途、発生頻度、回収期間により分類される。運転資金には経常的なものと臨時的なものがあることに注意が必要。
|
[ 1 ]
資金には、各々「性格」があります。資金管理で大切なのは、資金の性格に応じて適切な対処をすることです。そこで、資金をいくつかの分類で区分して、その性格を探ってみましょう。
――●資金の分類方法
資金の分類基準として代表的なものは、@使途、A頻度、B回収(回転)期間、の3つです。
┏運転資金・・・・日常の営業活動で必要になる資金。仕入代金
や経費の支払資金。
@使途┫
┗設備投資資金・・建物・機械等の固定資産の取得や研究開発に関する支払資金。
┏経常資金・・・・日常的に頻繁に繰り返し発生すもの。運転資金とほぼ同義。
A頻度┫
┗経常外資金・・・発生頻度が少なく、年に数回しか発生しないもの。
┏短期資金・・1年以内のサイクルで回転するもの。
B回収期間┫
(回転) ┗長期資金・・資金の回収もしくは支払が、長期(1年以上)にわたるもの。
上の区分のうち資金繰りの点で重要なのは、Bの回収期間です。それは、その性格に応じて、求められる資金調達の方法が異なるからです。たとえば、回収期間が長期にわたる設備投資の資金を短期の借入金で賄ったら、資金ショートするのは目に見えています。
長期資金は自己資本や長期負債によって調達し、一方、短期資金は短期の借入金などで対応するのが資金繰りの大原則です。資金の運用と調達は、長短のタイミングを合わせることがポイントです。
――●運転資金の分類
さて上の分類で、設備投資資金は、そのまま経常外資金、長期資金に該当します。厄介なのは運転資金です。運転資金に関しては、さらなる分類が必要です。
┏経常運転資金
┏(長期資金)┻増加運転資金
運転資金┫
┗(短期資金)┳臨時運転資金・・決算(納税・配当)資金、賞与資金、季節資金
┗つなぎ資金
上の図で経常運転資金とは、現状の売上や在庫水準、売上仕入の決済条件のもとで経常的に必要とされる運転資金を言います。増加運転資金とは、売上が増加した場合や決済条件に変化が生じた場合に必要になる資金のことです。
経常運転資金と増加運転資金は、いわゆる運転資本(売掛金や在庫と買掛金のネット残高)と現金払いの諸経費(人件費など)の水準で決まります。これらはひとつひとつを見れば、たしかに短期で回っていますが、全体としてみれば、否応なく常にある一定残高は発生してしまうものです。
すなわち、このとき資金は完全に「寝た」状態になり、企業が清算するまで回収できない状態が続きます。回収期間の上では、長期どころか回収できないものです。したがって、これらの運転資金は、返済不要な自己資本で賄うべきということになります。
ただ、増加運転資本をすべて自己資本で調達するのはなかなか難しいでしょう。その際は、長期借入金での調達を図ることになります。くれぐれも短期資金と混同しないようにして下さい。
なお、臨時運転資金とは一時的に発生する運転資金のことです。法人税や配当金支払のための決算資金、賞与支給のための賞与資金、取引や資金需要に季節性がある場合の季節資金がその例です。これらはあらかじめ読み込めるものなので、短期の借入金などで計画的に資金調達し、年度内のキャッシュフローで返済していきます。
つなぎ資金とは、入金日と支払日のズレによって、月中で一時的に必要になる資金を言います。たとえば、支払日(20日)が入金日(月末)よりも先行する場合、支払日前に資金を借り、月末の入金で返済するようなパターンです。資金繰りの点では、できるだけつなぎ資金を必要としないよう、決済条件を工夫することが重要です。
■
|