――●「期間」の概念
企業会計のもうひとつの大きな特徴は、「期間」の概念が存在することです。
たしかに家計簿も月単位で作成します。しかし、たとえばカード払いでの買い物をわざわざ家計簿につけている人がどれくらいいるでしょうか。
もし、家計簿の目的が、「収入以上の買い物をしないようにし、家計を健全を保つ」ことにあるとすれば、カード払いの分も別途記録しておくべきでしょう。そうすれば、カード破産は避けられるはずです。
(カード破産する人は、通常の家計簿すらつけてないでしょうが・・・)。
これに対し、企業会計の場合は、支払が生じていなくても仕入れた月に記録をします。期間内に発生した取引は、キャッシュのやりとりにかかわらず、その期間の取引として記録をするのです。
さて、家計簿でカード払いの分の記録をしないのは、「面倒だから」でしょう。仮に記録をつけるなら、預金から引き落とされたときに記録すれば十分。
しかし、企業の場合には、「面倒だから」というのは言い訳になりません。家計は自分の財産の管理に過ぎませんが、企業は株主から出資してもらった資金をはじめ、「人様のお金」を扱っています。
(仮にオーナー会社であっても、会社を倒産させてしまえば従業員や取引先、その家族など非常に多くの人々に迷惑をかけてしまいます。)
したがって、より厳密に経営状況を記録する必要があるのです。
現代の企業は、未来永劫、事業活動を継続していくことを前提・目的としています(大航海時代は、航海の都度会社を作り、航海終了とともに収支を精算してい
ましたが)。そのため、定期的に期間を区切って、経営活動の結果と原因を見つめ、環境変化へタイムリーに対応していくことが求められているのです。
こうした「期間を区切った、経営活動の結果と原因の計算」を、「期間損益計算」といいます。この期間損益計算こそが、会計を複雑にし、一般の人を会計から遠ざけてさせてしまう元凶なのです。