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ただ2004年3月期はパソコンの販売が減速しているうえ、1400億円に上るリストラ費用が利益を圧迫し、純利益は500億円に減る見通しだ。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 25日の東京株式市場は「ソニーショック」に見舞われ、日経平均株価はバブル崩壊後の安値を更新した。ソニーの減益見通し発表で、今期も企業業績は回復が続くとの数少ない買い材料が揺らいだ。 ソニー株には取引開始と同時に、国内外の機関投資家などからの投げ売りが殺到、間もなく前日比500円安の3220円でストップ安売り気配となった。取引終了後に残った売り注文は4000万弱にものぼった。 業績が大幅に低迷するなかでも、今後3年間で1兆円と大規模な投資を予定していることや、リストラがこれからも続くことを受けて、「ソニーはしばらく減益基調から抜け出せないのでは」との見方が浮上している。 「ソニー株は連結株価純資産倍率が1倍になる2500円が下値のメド」との声まで出ていた。
では何故、株価は上がらなかったのか。それは、2003年3月期の好業績は既に株価に「織り込み済み」だったからだ。それどころか、もっといい内容の決算を前提に株価は形成されていた。 ソニーは1月末に業績予想として、営業利益2800億円、純利益1800億円を発表していた。マーケットもこの数字が達成されるものと考え、株価に織り込んでいた。ところが、ふたを開けてみると営業利益は1854億円と予想から1000億円も下回った。この結果、失望売りがかさみ、株価は急落することとなった。
1つは業績や成長期待に対する失望である。ソニーの場合、圧倒的なブランド力と独創的な製品開発力を背景に好業績と高成長が期待され、高い株価がついてきた。ITバブル崩壊によって株価は大きく下落したが、それでも他のIT銘柄に比べれば値を保ってきた。 しかしながら、下表のとおりソニーの業績を冷静に見れば、収益力が低下傾向にあることが分かる。ソニーはこの数年、かつてのウォークマンのような「世界初」の革新的な製品を開発できていない。「ソニーが作るとこうなる」式に他社の開発した製品をセンスよく改良することで一定の収益を確保するにとどまっている。
事業内容を見ても、実のところパソコンや旧型のAV製品(ブラウン管テレビなど)といった「古い」製品群と浮き沈みの激しいソフト事業が主体となっている。気が付けば「先進企業ソニー」は、時代に後れを取りつつあるようにさえ映る。
通常、これほどの業績変動がある場合には事前に業績修正を発表することになっている。ソニーのホームページから業績発表の模様を聞くことができるが、アナリストからもソニーのIRの姿勢を問う声が上がっていた(アナリストも面子をつぶされたとあって、殺気立っているようにも聞こえた)。 会社側の説明によれば、業績修正の半額程度は3月末の時点で把握していたという。しかし、更なる下方修正の影響を把握しきれていなかったため、実績確定を待って発表となったという。これは、ソニーが業績管理を十分にできていないことを意味する。経営の質に関わる問題だ。 ソニーは執行役員制の導入など、経営管理の面でも日本企業をリードしてきた。それがソニーに対する信頼を高めてきた。ここに来て、急速な業績悪化と、さらにそれがソニーのマネジメントそのものに起因する本質的なものではないかという疑念によって、ソニー神話は大きく揺らいでいる。
株価が下がると分かっていながら、自社株を取得することはできない。割高な株価で自社株取得をすれば、株主の利益を損なう。株主に訴えられるおそれさえある。 自社株取得は株価が割安なときに行なわれるべきものだ。自社株取得は、経営陣からマーケットへの「株価が割安である」とのメッセージでもある。裏返して考えれば、自社株取得をしないのは株価はまだ割高だというメッセージとも言える。
ソニーは自社株取得について、「まだ自社株買いをする状況ではない」と具体的な理由の説明を避けてきたという。皮肉な見方をすれば、「それですべてを察してくれ」ということだったのかも知れない。 ■株価は投資家の期待と信頼を裏切ったときに下落する。両方を同時に裏切れば、株価は暴落を免れない。 |
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