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前期末の国内店舗数は1045店。うち約1割の107店がのれん分け店だが、この比率を2008年3月期に店舗の約78%に高める。 のれん分け店は社員が独立して店長となり、家賃や販促費なども負担するため、三城本体では1店当たり年間約3000万円の販管費を節約できる。計画どおりにのれん分けを進めると、300億円強の販管費削減が見込める。 三城が販管費削減を急ぐのは西友と組み日本に進出した米ウォルマートが眼鏡直営店を持っているため。多根会長は「売上高販管費率が17%のウォルマートに対抗するには、当社も同水準に引き下げなければならない」と危機意識を強めている。 2004年3月期は35店ののれん分けへの転換を計画、販管費削減効果は10億円強となりそう。営業利益は前期比38%増の109億円強になる見通しだ。
表を見て分かるのは、粗利率 の高さと経費率(固定費水準)の高さだ。粗利は取れるが、経費もかかる。結果、それほど儲からない(と言っても、営業利益率は高い部類に入るが)。
三城は2002年2月以降、既存店売上高が前年比二ケタのマイナスを続けている。消費不振の中、低価格店に客を奪われているのだろう。2003年3月期は全体で12%弱の減収となった。 三城のような固定費水準の高い企業は売上減少の影響が大きい。上表から分かるとおり、売上は12%弱の減少だが、営業利益の方は半減した。このままの減収ペースが続けば、今期はほとんど利益が出なくなってしまう。
ここで重要なのは、固定費を変動費化することだ。経費を変動費化することによって、売上減少に対する耐性が強くなる。一方で、店舗閉鎖などの縮小均衡も避けられる。 のれん分けも固定費の変動費化と考えることができる。数字を交えて確認してみよう。 今、上代を100、原価を25、FC店への卸売価格を60としよう。のれん分けして店舗がFC店になると、本部である三城の儲けはFC店への卸売りから得られる儲け(60-25=35)だ。このとき、粗利は直営のとき(100-25=75)よりも40小さくなる。 たしかに粗利率は落ちるが、一方で店舗経費の負担はなくなる。店舗経費を売上の40%に変動費化したのと同じことだ。店舗が赤字になろうと経費の追加負担はない。本部経費を無視すれば、卸売分の粗利が確実に儲けになる。売上の増減によって利益が増減するだけで、赤字に陥ることはない。
メガネ販売チェーンのように「素人商売」が難しい業種でFC化を進めるにはのれん分けを活用するのが適当なのだろう。また、社員に独立意識をもってもらうことでモラールアップを図り、売上減少に歯止めをかけたいという意図もあろう。 さて、今回ののれん分けは従業員にとっては過酷な話でもある。従業員の立場からすると業績不振のリスクを自分たちに押し付けるものと映るだろう。また、究極の成果配分型報酬制度ということもできる。もっと言えば、全面的なのれん分けは「社員はいらない」という意味で従業員にリストラを宣言したものとも言える。
全面的なのれん分けの実行にはいくつかハードルがある。まず、社員が受け入れるか。過去、生産ラインの従業員について雇用契約から請負契約に切り替えて裁判沙汰になっている例もある。さらに、従業員の独立資金の手当てや店長以外の従業員の取扱いなどもどうするのだろう。三城ものれん分けのスキームについては模索中のようだ。 ■デフレ経済にあっては、固定費の変動費化によって売上減少への抵抗力を高めることが必要になってくる。 |
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