(A)資金繰りで大事なのは、一にも二にもタイミングである。 |
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資金繰りを理解する上で大事なのは、一にも二にもタイミングです。具体的に言えば、
@取引と資金の動きの間にはタイミングのズレがある
A資金繰りはタイミングが合わなかったらアウト
ということです。
では、この2つについてそれぞれ解説していきましょう。
――●取引と資金の動きのズレ
売上や仕入といった会社の取引は、すべてが現金取引というわけではありません。むしろ、売上代金の回収にしろ、仕入代金の支払いにしろ、掛での決済(信用取引)が一般的です。すべてを現金取引にしたら、取引の都度決済をしなければならず、商売が円滑に進みません。
この結果、取引の発生と資金の動きの間には、タイミングのズレが発生します。たとえば、売上は1月に行なわれたが、代金の決済は3月末というようなかんじです。しかも、タイミングのずれ方も様々です。たとえばすべての得意先に対して、一律の決済条件を強要できるところなどないでしょう。
さらに日本には、手形決済という、タイミングの計算を込み入らせる厄介な取引慣行が存在します。
こうした複雑なタイミングのズレこそが、資金繰りを煩雑なものにし、多くの人に「資金繰りは苦手」と言わしめる元凶なのです。損益の計算は、売上からの引き算だけで簡単に答えが出ます。しかし、資金繰りの場合、タイミングという要素が加わるので、2次元、3次元の世界になってしまうのです。
――●売上代金の回収過程
さて、売上代金の回収を例にとって、取引と資金の動きのズレを具体的に確認してみましょう。
今、3つの得意先をもつA社があります。3社との決済条件は、それぞれ1ヶ月後現金、2ヶ月後現金、3ヶ月後現金で、その構成比が50%、30%、20%だとしましょう。このとき、A社の売上と資金(回収)の関係は、たとえば下表のような推移を辿ります。
上の図で、1月の売上代金(@)は、矢印のような過程で回収されていきます。まず、現金売上はないので、当月回収はなし(A)。次に、1ヵ月後に50%分の入金があり(B)、その後、2ヶ月後30(C)、3ヶ月後20の入金があり(D)、すべての代金が回収されます。
以降の売上も、同様なかたちで回収されていきます。この結果、各月の売上と資金は、
1月:売上100vs回収0、2月:110vs50、3月:120vs85、4月:120vs113
となり、ズレが生じていることが分かります。
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仕入や経費についても、同様に取引と支払の間にズレが生じます。資金繰りとは、こうしたタイミングのズレを1つ1つ調整していく作業のことなのです。
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