(A)資金繰りで大事なのは、一にも二にもタイミングである。 |
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では次に、「資金繰りはタイミングが合わなかったからアウト」という点について解説しましょう。
――●野球とボクシングの違い
時として、資金繰りはボクシングにたとえられます。通常の業績判断が野球なら、資金繰りはボクシングのようなものだ、というのです。
野球のルールは、9回終わった時点での得点を競うものです。だから、9回2アウトからの逆転もあり得ます。ところが、ボクシングの場合、途中でKOされてしまえばその時点で試合は終了、その先はありません。
一般に、経営や業績を判断するときにはある期間をもって判断します。1ヶ月なり、半年なり、1年間のスコアで考えるわけです。だから、上期の赤字を下期の業績でカバーして通期では黒字を確保、といったようなことも可能なわけです。
しかし、資金繰りにはそんな「悠長」な発想は許されません。瞬間瞬間の銀行残高を常に黒字にしておかなればいけないのです。
極端な話、明日1億円の入金があることが確実だとしても、今日の10万円の手形を落とせなければ、その時点でその会社はおしまいなのです
(実際には、翌日の入金を担保にして資金調達を図って乗り切るのでしょうが・・・)。
資金繰りでは、大変過酷なルールが適用されるのです。
――●タイミングの問題と企業の命脈
資金繰りの複雑さ・重要性は、上に述べた2つのタイミングの問題が交錯するところにあります。いくら資金繰りはタイミングが命だと言っても、取引と資金の動きにズレがなければ、「儲かっていない会社がつぶれるだけ」で話は単純です。
ところが、実際には儲かっている会社もつぶれます。取引と資金の動きにズレが存在することから、業績は好調でも一時的に資金が不足することがあり、その資金不足をたった1日でも埋められなければ、会社はその命脈を絶たれるのです。
「当面の運転資金さえ確保できれば、その後は資金繰りのメドもついていたのに、銀行が借入に応じてくれなかった」−−昨今の貸し渋りの中で、多くに企業がこんな繰り言を残しながら倒産していています。
あるいは得意先が倒産して、突然資金繰りが狂い、そのまま時間切れを迎えてしまう会社も枚挙に暇がありません。
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多くの人が資金繰りを苦手としているのは、頭の中がすべて「損益思考」になっているからです。たしかに中期的に見れば、会社で重要なことは「会社が儲かる」ことです。しかし短期的に見れば、それだけでない。資金が回ることの方が重要なのです。
上で見たように、資金繰りと損益では、タイミングという点で二重にルールが異なります。資金繰りを考えるときには、損益思考から脱し、頭の切り替えが必要とされるのです。
よく「利益と資金は事業の両輪」とか、「事業は、利益と資金のバランスが大事」などと言われます。これは、利益と資金のタイミングの違いを認識し、複眼で事業に当たりなさいということを述べているのです。
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