本文へスキップ
HOME 会計の基礎 財務の基礎 事業再生 ニュースで考える財務 弁護士のための会計・税務 提携先募集 事務所案内

(Q)「倒産」にはどんな種類があるのか?

 

(A)手続き面では法的整理と私的整理、処理目的として清算型と再建型がある。

 1   ]
 

 私たちはしばしば「倒産」という言葉を見聞きしますが、倒産という言葉に明確な定義はありません。法律にも倒産という言葉は登場しません。一般には、「資金繰りに窮してそのままでは事業を継続できない状況 」を倒産といいます。


――●
倒産手続きの分類

 倒産処理にはいくつかの方法があります。そして、それらは一般に手続きと目的の観点から類型化されます。

 まず手続きに着目すると、法的整理と私的整理とに分けられます。法的整理とは、裁判所の関与の下で法律に則って倒産手続きが進められるものをいいます。一方、私的整理とは、債権者と債務者の話し合いによって利害調整を図って処理を進めるものです。

 次に、目的の観点からは清算型と再建型とに分けられます。清算型とはすべての資産を換金処分して債権者に分配し、事業を廃止するものをいいます。一方、再建型は事業資産を残しながら事業を継続し、得られた収益をもとに債務の弁済を行ない、事業再建を目指すものです。

 一般に「倒産」というと清算型の処理をイメージしがちですが、事業の存続・再生を目指す再建型の手続きがあることにも注目すべきです。倒産の原因がたとえば株式投資の失敗で事業自体には利益が見込めるなら、資産を処分するより事業を継続した方が債権者にとっては債権の回収額が増えることもあります。こうした場合には再建型の手続きが採用されます。


――●法的整理とは

 法的整理には手続きの根拠となる法律によって4つのパターンがあります。民事再生、会社更生、破産、特別清算の4つです。概要は下表のとおりです。
 

手続名

根拠となる法律

対象

目的(清算・再建)

民事再生

民事再生法

法人、個人

再建型

会社更生

会社更生法

株式会社

再建型

破産

破産法

法人、個人

清算型

特別清算

会社法

株式会社

清算型

 このうち、一般に利用されることが多いのは、再建型では民事再生、清算型では破産です。会社更生法は一部大企業の再建手続、特別清算は債務超過に陥った子会社を清算するときに利用されるぐらいです。


――●私的整理とは

 私的整理は法律の制約がない分、手続きは様々です。私的整理にも再建型と清算型がありますが、世の倒産処理の中では清算型の私的整理が大半を占めます。

 一方、最近多くなっているのが再建型の私的整理です。 事業再生の現場で「私的整理」という場合には、むしろこの再建型の私的整理のことを指します。私的整理では銀行などの債権者との間で直接利害調整を行なって、再建計画を合意するものです。「利害調整」の内容としては、債務返済の繰延や債権カットが含まれます。

 なお、この狭義の私的整理の場合、債権者と債務者が直接協議をすることもあれば、調整機関・仲介機関(企業再生支援機構、整理回収機構、中小企業再生支援協議会等)を交えて利害調整を進めることもあります。


――●法的整理と私的整理の違い

 法的整理と私的整理の違いは、形式的には上述したとおり裁判所の関与の有無ですが、特に再生型の場合、実態面でも大きな違いがあります。

 本質的な違いは、利害調整の対象となる債権者の範囲です。一般に、私的整理の場合、銀行借入などの金融債権者を交渉の対象とし、仕入先などの商取引債権者は対象としません。一方、法的整理の場合は原則としてすべての債権者を対象として手続きが進められます。

 私的整理の場合、金融債権者(銀行)の立場で率直に考えれば、同じ債権者なのになぜ仕入先は利害調整の対象とならないのかという疑問が生じます。裁判所が関与しない分、手続き面倒でない点が挙げられます。 但し、一方、財産の分配を含め、具体的な整理方法は原則債権者の全員が同意することが必要になります。このため、債権者間の調整ができるかどうかがポイントです。

 これに対し法的整理の場合、多数決によって再建策を決定できます(民事再生の場合)。また、法的整理を申し立てると財産保全措置が取られ、原則として債務の弁済が禁止されます。一部債権者の抜け駆けを防ぐことができ、手続きの公平性が担保されます。ただし、その分時間がかかるというのが難点です。

 次に、再建型か清算型かという点。もちろん、再建型の方が好ましいわけですが、現実的には清算型が大半です。再建型の場合、再建に向け事業の「余力」が残っている必要があります。しかし、実際にはその段階で手続きが決断されることはなく、倒産時には万策尽きた状況になっていることが大半だからです。また、倒産原因が本業不振の場合など再建可能性がないケースが多いのも事実です。

 一般論として、好ましい倒産手続きに順番をつけるとしたら、@再建型私的整理、A再建型法的整理、B清算型私的整理、C清算型法的整理、という順になるでしょう。

 注意すべきはこれらの手続きは必ずしも固定的なものではないということです。再建型の私的整理を目指しながらも、債権者との交渉がうまく行かなければ民事再生法の申請を適用することになるでしょうし、現実の交渉の過程では法的整理もちらつかせながら債権者の合意を取り付けたりします。

 また、内整理で進めてみたが債権者がまとまらず、破産申し立てをするケースもありますし、民事再生を申請したが再建可能性がないと判断されて破産手続きに移行するケースもあります。



 ▼次のQ&Aに進む