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(Q)弁護士としての決算書のチェックポイントは?

 

(A)実質的な資産価値と正常な収益力 を把握しつつ、実務上の問題点を検討しておく。

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――A損益計算書のチェックポイント

 
 損益計算書のチェックポイントは収益力の把握です。
M&Aにおける企業価値も、事業再生における債務弁済能力も、いずれも(資産価値と)将来の収益力とがベースになります。なお、損益については決算上 (表面上)の収益力ではなく 「正常な収益力」はどの程度かを把握することがポイントになります。加えて、対象会社の収益構造を理解して、収益の改善余地がどのくらいかを把握することも必須です。


【売上】
・売上の内容は?受注から売上計上までの流れは?
・売上の傾向は?増収か?横ばいか?減収か?その要因は?
・業界動向(市場動向)は?
・特定の得意先への依存度は?
・M&A/法的整理に伴う取引継続の可能性は?

 対象会社を理解するには、その事業や業界を理解することが第一歩です。 すなわち、対象会社の売上の内容(源泉)が何であり、売上までの業務の流れがどうなっているのか(その間に得意先・仕入先等含め、どういった取引先・利害関係者が介在するのか)を把握することが何より重要です。また、大なり小なり業界慣行(たとえば、出版業界における返品制度等)というものは存在するもので、それが案件に与える影響を認識しておく必要があります。

 このほか、対象会社の売上動向、また業界全体としての売上動向を把握することも重要です。対象会社の売上は右肩上がりなのか、減収傾向なのか、そしてその要因は何なのか。市場全体が縮小して、売上の大幅な回復は難しいのか。 特に再生案件の場合、今後の売上動向によって対応の仕方が変わってきます。

 さらに、売上はその中身(売上構成) の把握も重要です。顧客ごと、事業・製品ごと、店舗ごとの売上構成がどうなっているのか。特定の得意先への依存度が大きい場合、M&Aや法的整理によって重要得意先が離反する可能性があるのか確認しておくことは極めて重要です。法的整理の場合には、重要顧客に対し て事前に(直前に)説明して協力を取り付けることも検討しておく必要があります。またM&Aで買い手側の場合には、取引先が一定以上離反した場合の瑕疵担保条項の検討も必要になります。


【売上原価(仕入・外注費等)】
・原価構成(仕入・外注等)はどうなっているのか?
・事業・製品・得意先・店舗ごとの原価率(粗利率)はどうなっているか?
・代替できない重要な取引先はあるか?連鎖倒産の可能性のある取引先はあるか?

 売上原価を見るときは(原価以外の経費を含めてですが)、「売上はあがっていても本当に儲かっているのか?」という視点が大事です。 再生案件の場合、不採算となっている取引(事業・製品・得意先・店舗)があるのが一般的であり、不採算取引を見直すことで再生の可能性があるのかを検討する必要があります。

 また、得意先同様、 M&Aや法的整理によって離反してしまう取引先があるのかの確認も重要であり、法的整理の場合には事前説明が必要の場合もあります。法的整理の場合は、取引は継続しても取引条件の見直しを求めてくる(ふっかけてくる)こともあるので、資金繰り計画上は勘案しておく必要があります。一方で重要取引先については 、連鎖倒産による事業停止を招かないための資金繰支援も検討課題になります。


【販売管理費(人件費・販売促進費・物流費・物件費・償却費・諸経費)】
・従業員数及び人員構成(部門別や正社員・非正規従業員の別)は?
・役員及び従業員の給与水準及びその持続可能性は?
・労働組合はあるか?労使関係の状況は?
・退職金制度の内容及びその財政状況は?
・営業チャネルは自社営業か?代理店か?ECモール等か?
・物流(配送や倉庫)の体制は自社か?委託か?オペレーションのスケジュールは?
・事業所は自社物件か?賃借か?その契約内容(解約条件)は?
・重要なリース資産はあるか?その契約内容(債務残高)は?
・償却不足はあるか?
・多額の支払報酬や支払手数料が計上されている場合、その内容は?

 販売管理費(経費)を財務的に見るときの着目点は、まず固定費水準が現在の売上規模に照らして妥当かどうかです。人員や設備・事業所の規模が過大であれば、リストラの検討をせざるを得なくなります。その場合、退職金や契約上の問題等から支障となることも多いので注意が必要でしょう。

 また、人件費については経営不振等により一時的に 役員・従業員の給与(賞与)を下げていて、持続可能な水準でない場合もあります。正常収益力を把握する上では、これらを補正する必要があります。 なお、人件費に関してはコンプライアンス上のリスク(未払残業代や社会保険の未加入等)にも注意が必要です。

 なお、とりわけ再生案件では、経営者と従業員の間の信頼関係の有無が成否に影響することもあります。


【その他損益(営業外損益・特別損益)】
・営業外損益・特別損益の内容は?

 営業外損益と特別損益はその内容を確認する必要があります。とりわけ特別損益は、経営上、何らかの特別なイベントが発生していることを意味するので、その事象の内容ならびにそれが生じた理由・経緯を確認することが肝要です。
 


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