(A)事業譲渡清算型のスキーム等においてタックス・プラニングがより重要になってくる。 |
平成22年度の税制改正により、法人の清算所得の計算方法が平成22年10月から変更されました。
ここで清算所得とは、会社解散時から清算の間の所得計算のことをいいます。改正の内容と事業再生・倒産処理の実務への影響を考察すると次のとおりです。
●清算所得課税の意義
まず、事業再生・倒産処理における清算所得課税が何故論点になるのかを確認し
ておきましょう。
債務超過の会社が清算結了するには、弁済できなかった債務額について債務免除を受ける必要があります(破産でいえば、債務免除を受けるというより債務免除が生じる)。このとき、税務会計上は債務免除益が生じます。
債務免除益は
、「益」といっても現金が入ってくるわけではありません。しかし、税務上は現金収入がなくても益は益、対応する損がなければ債務免除益に対して課税が生じることもあり得ます。
すなわち、事業再生・倒産処理における清算所得課税の論点は
、債務免除益課税が生じるかどうかにあります。
●清算所得課税の従前の計算方法
法人税における通常の課税所得の計算は、当該事業年度の損益をもとに
計算する「損益法」ですが、改正前の清算所得課税は会社解散時に比べて剰余金が増えたかどうかで計算する「財産法」でした。
会計的に単純に考えると、「ある期間の損益=剰余金の増減」ですから、損益法と財産法で何か違うのかという疑問が生じるかも知れません。
損益法と財産法の違いは、財産法では「計算過程」が省略されるという点にあります。
事業再生案件を前提とすれば、当該会社は債務超過でそもそも剰余金がありません。剰余金がなければ、財産法では計算するまでもなく課税はありません(マイナスの剰余金である欠損金が減っても課税は
ありません)。
したがって、清算型の法的整理においては債務免除益発生のタイミングさえ注意すれば、免除益課税に神経質になる必要はありませんでした。
●清算所得課税の改正内容
しかしながら、平成22年10月以降に解散登記した法人については
、清算所得についても通常と同様の損益法によって課税所得計算を行なうこととなりました。
この結果、計算過程が重要になってきました。というのは、別の項で説明したとおり、税務上の課税所得計算では
、会計上の経費・損失がそのまま税務上も損金としては認められないからです。
このため、債務免除益にぶつける損金をどうやって作っていくかを丁寧に検討していくことが必要になったのです。
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