|
[ 1
2
3
]
|
(事業コントロール) |
・・・全社的、経営レベル |
|
(会計業務) |
(資金業務) |
・・・個別的、事務レベル |
――●常識的に理解できる財務知識
管理会計や企業財務(以下、合わせて財務と言います)は、2つの内容に分類できます。常識的に理解できることと、常識的な判断ではかえって間違えてしまうこと、の2つです。どちらが多いかと言えば、前者の方が圧倒的に多い。
まず、「常識的に理解できる財務知識」とは、次のようなものです。
・在庫を増やせばお金が減る。更にそれが売れなければ、事態はもっと深刻になる。
・大きな先行投資をした場合、それを回収できなければ資金は回らなくなる。
・顧客から代金を前払いでもらえば、借入れをせずともお金が回る。
これらは「知識」というよりは、まさに「常識」と言うべきものでしょう。でも、しばしば経営者は、これらの常識を見失ってしまいます。
経営者は、大変前向きな人が多い。これは、経営者にとっては必須の要素でありましょう。ただ、ともすれば度を超えて、「前がかり」になりがちです。特に、起業段階ではその傾向が強くなります。テイクオフには猛烈な助走が必要になりますから、当然だとも言えましょう。
こうしたときに視野狭窄を起こし、「常識」が見えなくなってしまうのです。結果として、「暴走」になってしまうのです。
また、常識に対し盲目になるのは、経営者ばかりではありません。経理担当者だってそうです。足元にしか視野のない事務屋の人間では、全社的な課題を常識的に判断・解決することはできません(この点は、「専門家」と呼ばれる有資格者にも言えることですが・・・)。
結局、こうした面での財務の学習は、全社的な視野を持ち、事業運営のリスクを再認識し、バランス感覚を養うことだと言えます。個別の知識の習得というより、財務的な視点を忘れないようにすることです。
――●常識の落とし穴
さて次に、常識では判断を間違えてしまう内容とはどういったものでしょう。
・売上が2倍になると、利益も2倍になる
・製造原価100の製品を80円で売ったら、必ず損が出る
・売上が増えると資金繰りは楽になる
・企業の格付けは、高ければ高いほどよい(AAAがいちばん望ましい)
1つ1つについての解説は割愛しますが、これらの命題は、財務的に見ればすべて「否」です。これらが正しいと思って経営判断を下したら、思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性があります。
こうした項目は、数が多いわけではありません。個別に論点をつぶしていけばいいのです。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
財務は、利益を出すための、会社を存続させるための、そして企業価値を高めるための施策を考え、それらを組織に落とし込んで実行していくのが役目です。経営管理の中枢と言っても過言ではありません。
経営者は、決して営業や技術の部門責任者ではありません。すべての部門のトップであり、最終責任者です。であれば、経営管理のための財務知識は必須のものです。
「 中小企業には、財務の分かる人材が不足している」――こんな指摘をしばしば耳にします。ただ、中小企業で有為の人材が不足するのは当然のこと。中小企業にとっては、経営者自身が唯一最大の経営資源です。「食わず嫌い」せずに、自ら財務知識を身に付けることが、事業を成功に導く途と言えるでしょう。
(C)公認会計士米井靖雄事務所 1999-2010 |