簿記や会計は、しばしば「ビジネス言語」と呼ばれます。決算書は、事業活動の結果を伝えるための、まさにコミュニケーション・ツールです。
ならば経営者として、コミュニケーション可能なレベルでの、最低限の会計知識は身に付けておく必要があります。ここでは、まず簿記の「言語体系」をざっくりと見ていきましょう。
――●簿記で「伝えたい」こと
そもそも、言語は何か「伝えたい」ことがあって、はじめて成立します。簿記は事業上の取引を記録するものですが、それによって一体何を伝えたいのでしょうか。結論を焦れば、簿記で伝えたいのは「取引の原因と結果」です。
「取引」には必ず二面性があります。原因と結果の二面性です(原因と結果はコインの裏表であり、見方によって裏と表の双方が、原因にもなれば、結果にもなります)。
今、「パソコンを買う」、「商品を売り上げる」、「銀行から資金を借り入れる」という3つの取引を例に考えてみましょう。更に単純化のために企業の取引がすべて現金取引
(現金決済)だとした場合、上述の「取引」の例は、次のようにその二面性を表現できます。
・「@パソコンを買ったので、A現金が減った」
・「@商品を売ったので、A現金が増えた」
・「@銀行から借入をしたので、A現金(預金)が増えた」
ところで現在、国や地方公共団体で、経理に企業会計の方法を導入しようという動きが進んでいます。今までの経理の方法では、単純なキャッシュの増減しか記録せず、「原因と結果」を明らかにできないからです。
そのため、投資やサービスの効率性を測定できず、また、無駄な資産や膨大な負債の状況も把握できません。それにより、状況を掌握できずに対策が遅れ、更なる財政状態の悪化を招くという悪循環にはまっているのです。
一方、企業会計の簿記では、「原因と結果」を明らかにします。上の例で言えば、パソコンという投資の結果や、商品売上という収入の原因、資金調達の結果としての借入金残高を把握することができます。これにより、結果を見て、原因を分析し、経営の改善に結びつけることが可能になるのです。
簿記で伝えたいことは、経営活動の結果とその原因です。