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(Q)簿記とは?

 

(A)簿記とは、経営活動の原因と結果を記録する手続きである。

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――●簿記の「名詞」や「動詞」

 簿記の対象となる取引は無数にありますが、大きく5つの要素に分類することができます。資産、負債、資本、収益、費用の5つです。これらは、言語でいう「名詞」や「動詞」に相当します。

 取引は、これら5要素の組み合わせにより記録されます。先の例でいえば、「商品を売ったので現金が入った」という取引は、売上という「収益の発生」と、現金という「資産の増加」の組み合わせにより記録されるのです。

 5つの要素のうち、資産、負債、資本の3項目を貸借対照表項目と言います。一方、収益、費用は損益項目と呼ばれます。貸借対照表項目を集計要約したものが貸借対照表(バランス・シート:B/S)であり、損益項目を集計要約したものは損益計算書(P/L)と呼ばれます。

 一般に、決算書もしくは財務諸表とは、この貸借対照表と損益計算書のことを指します。

――●簿記の「構文」

 では、個々の取引は、具体的にはどのように「表現」するのでしょうか。

 個々の取引の記録は、「仕訳」と呼ばれます。仕訳は、取引の二面性を記録するべく、左右を一対にして記録します。たとえば、「商品を売ったので現金100が入った」という取引は、

(借方)現金   100 / (貸方)売上   100

というふうに仕訳されます。

 それでは、表現の決まりごと(文法)について説明していきましょう。

 まず、仕訳の左右の決まりからです。これは、資産を座標軸として、

 「左側は資産のプラスを記録し、右側は資産のマイナスを記録する」

と理解すればいいでしょう。あとはその応用です。すなわち、

 ・負債は資産のマイナスだから、負債の増加は右側で記録
 ・費用の発生は資産(現金)を減少させる。現金の減少は右側で記録されるので、
  対となる費用の発生は左側で記録
 ・収益の発生は資産(現金)を増加させる。現金の増加は左側で記録されるので、
  対となる収益の発生は右側で記録

といった感じです。実際には、頭で考えるとまわりくどいので、下図のような左右の項目のパターンで理解する方が早いでしょう(この辺は、多分に慣れの問題です)。
 

左側(借方)

右側(貸方)

資産の増加

資産の減少

負債の減少

負債の増加

費用の発生

収益の発生

 ここで、現金売上の仕訳を振り返ってみましょう。まず、現金が増えているので、左側に「現金100」と記録します(1)。次に、対となる売上を右側に「売上100」と記録するのです(2)。

(借方)(1)現金   100 / (貸方)(2)売上   100

 なお、仕訳の左側を借方(かりかた)、右側を貸方(かしかた)と言いますが、単に右・左で考えてもまったく差し支えありません。

 この左右のパターンの組み合わせは、言語で言えば構文に相当します。たとえば、

・パソコンの現金購入:「資産の増加」と「資産の減少」の組み合わせ
・銀行借入れの実行: 「資産の増加」と「負債の増加」の組み合わせ
・給与の支払:    「費用の発生」と「資産の減少」の組み合わせ

などです。

 ちなみに、左右一対で記録することには、もうひとつ意義があります。仕訳は、左右の金額が常に一致するので(というより一致するように記録するので)、集計の正確性を検証できるという点です。

 たとえば今、すべての取引が現金売上だとすれば、現金の合計と売上の合計は一致するはずです。食い違った場合、少なくともいずれかの集計が間違っていることが分かります(なお、このように左右一対で記録する方法を「複式簿記」と言います)。

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