――●簿記の「単語」
最後に、簿記の「単語」について見てみましょう。簿記の要素として、「資産」や「負債」など5つの要素を指摘しましたが、仕訳ではもっと細かい単位で取引を表現します。単に、「資産」や「負債」では、大雑把すぎて何のことだか分からないでしょう。
しかし逆に、その単位は実際の「単語」(たとえばパソコン)ほど細かくもなありません。単位が細かすぎると、集計が煩雑になるばかりか、細かすぎて「原因と結果」を伝えきれないからです。
簿記における「単語」は「勘定科目」と呼ばれます。たとえばパソコンは、一般に「工具器具備品」という勘定科目で表現します。したがって、パソコンの現金購入(100)を仕訳にすると、
(借方)工具器具備品 100 / (貸方)現金 100
となります。勘定科目は、集計記録のための要約単位です。
勘定科目は自由に設定できますが、コミュニケート可能な、一般的で内容を的確に示す要約レベルであることが必要です。現金、当座預金、売掛金などがその例です。
さて、パソコンを簿記の上では「工具器具備品」と表現すると述べましたが、これだけでは、「パソコンを買った」という事実は見えなくなってしまいます。実際、「工具器具備品」勘定で処理されるのはパソコンばかりではありません。応接セットや書架だって「工具器具備品」で処理されます。
そこで、集計上は要約した勘定科目を使う一方で、仕訳には「摘要」として取引の詳細を書き添えます。たとえば、上の例では、
(借方)工具器具備品 100 / (貸方)現金 100
〜(摘要)ノートパソコン(Let's note CF-S8)1台購入
などと記録します。こうすることにより、必要に応じて、集計結果から個々の仕訳を探索すれば、取引の細かな「原因」まで特定できるわけです。
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