決算書とは、企業業績を判断するための経営情報です。情報である以上、その位置付けが曖昧だと、情報の中に埋もれてしまったり、あるいは情報の読み取り方を間違えてしまったりします(それは、すなわち経営判断の誤りに結びつきます)。
――●決算書を作る立場と読む立場
情報には作り手(送り手)と受け手が存在します。決算書でいえば、送り手は経理担当者であり、受け手は経営者です。情報は、送り手と受け手の問題意識が合致していないと有効に伝わりません。しかし現実問題として、決算書という経営情報に関しても、両者の間に問題意識の差が見られることがままあります。
問題意識の差が如実に表れるのが、「勘定科目」に対する感覚でしょう。多くの会社では、「決算書」というと勘定科目単位の残高がズラリと並んだ、会計ソフトによるアウトプットをそのまま使っています。
規模の小さい会社ではそれでも「実害」はないかも知れません。しかし、経営者にとって必要なのは必ずしも勘定科目単位での決算書ではありません。
経営者として着目すべき勘定科目は、バランスシートで言えば、運転資本の主要科目と借入金だけで十分です(もちろん、業種業態等によって若干の違いはありますが)。そのほかの科目に関しては、要約した単位で残高を把握し、必要に応じて勘定科目単位にまでドリルダウンするようにすればいいのです。
したがって、決算書は会計ソフトによるアウトプットをそのまま見るのではなく、要約版を作成した方が読むべきポイントが明確になると思います。たとえば、経営者にとって必要なバランスシートは以下のようなものでしょう。
【要約バランスシート(B/S)】
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現金預金 xxx | 支払手形 xxx
受取手形 xxx | 買掛金 xxx
売掛金 xxx | 未払金 xxx
棚卸資産 xxx | 短期借入金 xxx
その他流動資産 xxx | その他流動負債 xxx
【流動資産】 【xxx】| 【流動負債】 【xxx】
有形固定資産 xxx | 長期借入金 xxx
無形固定資産 xxx | その他固定負債 xxx
投資その他 xxx | 【固定負債】 【xxx】
【固定資産】 【xxx】| 〔負債合計〕 〔xxx〕
| 資本金 xxx
| 準備金 xxx
| 剰余金 xxx
| 〔純資産合計〕 〔xxx〕
―――――| ―――――
〔資産合計〕 〔xxx〕|〔負債・純資産合計〕〔xxx〕
なお、要約した単位の勘定科目の内訳を説明しておくと次のとおりです。
棚卸資産 ・・・原材料、仕掛品(製造途中の未完成品)、商品、製品
その他流動資産・・・仮払金、未収入金、前払金、前払費用etc
有形固定資産 ・・・建物、機械装置、工具器具備品、土地etc
無形固定資産 ・・・電話加入権、借地権etc
投資その他 ・・・敷金保証金、子会社株式etc
その他流動負債・・・未払費用、預り金、前受金、賞与引当金etc
仮に勘定科目単位の決算書を読むことになった場合には、頭の中で上のような要約版をイメージしてみることも必要でしょう(あるいは、「決算書」の欄外にでも自分で要約版を書いてみると、より頭の中がクリアになるかも知れません)。