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(Q)経営者がイメージすべき決算書とは?

 

(A)勘定科目ごとの決算書をそのまま見るのではなく、経営判断のポイントが明確になった要約レベルの決算書をイメージすべきである。

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 前の頁で、経営の視点でバランスシート(B/S)を見るときには、勘定科目レベルではなく要約レベルで十分(というより、そうすべき)と述べましたが、要約B/Sの更なる要約、体系化を試みてみましょう。


――●ルール上の区分と財務管理上の区分

 バランスシートについては、別の項で資産・負債・資本のそれぞれについて「ルール上の」区分を説明しました。復習すれば、その区分は次のようなものです。


           
  【ルール上のB/S区分】
        ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        | 流 !現金預金   | 流 ! 買掛金   |
        | 動 !売掛金    | 動 ! 短期借入金 |   
        | 資 !棚卸資産   | 負 ! その他   |    
        | 産 !その他    | 債 !       |    
        |――――――――――|――――――――――|    
        |  !       |固定! 長期借入金 |    
        | 固 !有形固定資産 |負債! その他   |    
        | 定 !       |――――――――――|
        | 資 !無形固定資産 | 純 ! 資本金   |
        | 産 !       | 資 ! 準備金   |
        |  !投資その他  | 産 ! 剰余金   |
        └─────────────────────┘

 一方、財務管理や経営の視点でB/Sを区分し直してみると次のようなかんじになるでしょう。


             
 【経営上のB/S区分】
        ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        |          |          |
        |     運  転 | 資  本     |   
        |          |          |    
        |          |――――――――――|    
        |――――――――――|          |    
        |          | 有 利 子 負 債 |    
        |          |          |    
        |  固 定 資 産  |――――――――――|
        |          |  払 込 資 本  |
        |          |――――――――――|
        |          |  内 部 留 保  |
        └─────────────────────┘

 なお、区分の項目について若干の説明を補足しておけば、

 ・運転資本は売掛金、在庫、買掛金など短期間に回転する資産・負債、
 ・有利子負債はその名のとおり借入金や社債など利息のかかる負債、
 ・払込資本は株主が出資した金額(資本金と資本準備金の合計)、
 ・内部留保は利益のうち、配当などに回されず、社内に蓄積された金額

 です。

 それぞれの区分は、管理的な意味合いが違います。運転資本は、短期の資金繰りの影響を与えるものとして、日常的にその水準を意識的にコントロールすべきもの、有利子負債は資金不足を埋める性格であると同時に、返済可能性を常に管理しておくべきものです。

 払込資本と内部留保は、それぞれ「元手」と「利益」として性格を異にします。また、固定資産は一度購入してしまえばそれまでですから、投資をする際の採算性の判断がポイントになります。

 管理上の位置付けを理解し、個々の勘定科目残高をバラバラに考えることなく、「大きく見る」ことをこころがければ、決算書の重要な数字も自ずと頭の中に入ってくるようになると思われます。



――●要約損益計算書

 ここまでバランスシートの要約版について述べてきましたが、損益計算書(P/L)に関しても要約版が必要なことには変わりありません。

 損益計算書については、まさに会社会社によって要約の仕方が違ってきます。その事業を運営していく上でキーとなる科目については勘定科目単位で、そうでない部分は費用のカテゴリーごとに要約した単位で、要約版を作成することになります。

 たとえば広告宣伝費を例に取ると、その管理があまり重要でない場合には、他の販売促進費(ノベルティーの費用や交際費など)と合わせ、「販売促進費」と要約した方がいいでしょう。一方、広告宣伝が事業の性格上、重要である場合には、広告宣伝費用を媒体別に科目設定して管理することも必要になるかも知れません。

 むしろ、勘定科目が多くなる(会計ソフトからの打ち出しでは紙1枚におさまらないことも多い)P/Lこそ、メリハリのきいた要約版で損益状況を把握することが大切だとも言えるでしょう。