(A)運転資本とは、
日常の事業活動の中で生じる資金不足の水準をいう。 |
――●運転資本とは
企業は日常の事業活動において、取引先との関係で必ず何らかの資産や負債を抱えています。
小売業のような現金商売を除けば、売上はひとまず売掛金という債権のかたちをとります。また、そもそも販売に先立っては、製品や商品といった在庫を抱えておく必要があります。一方、仕入先に対しては、すべてが現金払いではないでしょうから、買掛金や未払金などの買入債務が発生します。
この、日常の事業活動の中で生じる資産・負債の純額を「運転資本」といいます。「流動資産の残高−流動負債の残高」というのが本来の定義ですが、それぞれの主要項目に着目して、一般に、
「売掛金・受取手形と在庫の合計から、買掛金・支払手形の残高を差し引いたもの」
と説明されることも多いようです(ネットの残高水準と捉えるより、売掛金や在庫、買掛金などの総称と考えた方が理解しやすいと思います)。
――●運転資本の管理が必要とされる理由
運転資本は通常プラスになります(売掛金と在庫の合計の方が、買掛金残高よりも多くなります)。それは、事業運営上、その分の資金が必要になることを意味します。
(売掛金や在庫は、いわば「入金待ち」の状態を意味します。一方、買掛金や未払金は「支払先延ばし」の状態を意味します。「入金待ち」の金額が「支払先延ばし」の金額より多ければ、その差額分だけ支払が先行するとになり、その分どこかから資金を調達してくる必要が生じます。)
したがって、運転資本の額は資金繰りに直結します。しかも運転資本は、設備投資のようなスポットの意思決定事項とは違い、取引先や市場との関係で日常的に変動していきます。そのため、意識的にその水準をモニターし、コントロールすることが必要になってきます。
また、運転資本の水準は利益の額を構成しません。そのため、その管理はなおざりにされがちです。しかし、運転資本は短期の資金繰りに直接的な影響を与えます(「運転資本=資金不足」だから)。最悪の場合、運転資本管理の失敗は企業を倒産に追い込むことさえあるのです。
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