――●業界・業態と運転資本の水準
運転資本の水準は、入金や支払の条件、商品や製品の回転状況に依存します。そのため、その会社の属する業界や業態によって規定される部分が多分にあります。
たとえば小売業の場合、売上の入金は現金ですが、仕入の支払は掛での後払いです。当然、資金繰りは楽になります。売上金を仕入代金支払までの間、自由に使え、店舗の出店資金にも回せます。
一方、同じ小売業であっても、在庫の回転は業態によって異なります。コンビニでは全商品が1週間で回転するのに対し、デパートの場合は数ヶ月を要します。仮に仕入の支払が2ヵ月後であっても、商品が売れるのに3ヶ月かかってしまえば、現金売上といえども支払の方が入金より先行してしまうことになります。
また、企業間の取引条件に関しても、業界慣行なるものが存在します。一般に重厚長大産業をはじめとする「古い」業界では、支払サイト(仕入から支払までの期間)が長くなっています。造船などでは、サイト180日や240日の手形は当たり前です。
事業を始める場合には、業界の取引慣行や在庫の回転日数を調査し、運転資本の水準がどうなるか把握しておく必要があります。