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(Q)埋没原価とは?

 

(A)埋没原価とは、 意思決定に影響を与えないコストをいう。

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 前頁では、設例を使って、「追加受注の意思決定は、それによって得られる収入と追加的に発生するコストを比較して判断を下す」ということを理解しました。ここでは、この問題を少し押し広げて考えてみましょう。

――●埋没原価の本質

 設例において、償却費と人件費は埋没原価でした。ここから埋没原価の本質が分かります。すなわち埋没原価とは、

 @償却費のように既に支出してしまったコストか、
 A人件費のように支出することを既に約束してしまったコスト

を指すのです。

 いずれにしても、意思決定は既になされており、今更変更できません。だから、追加受注といった新たな状況に直面した場合でも、判断材料にはならないし、また、してはいけないのです。


――●「原価割れ」受注の実務上の注意点

 ところで、先の設例には実務上、更に考慮すべき点が残されています。それは、値崩れやブランド・イメージ失墜への懸念です。

 設定した価格は、あくまで閑散期の特別価格です。もし、その価格が他の顧客の知るところとなったら、値下げ圧力を受けて製品の値崩れが始まることでしょう。あるいは、製品が最終消費者にも「特別価格」で流れたら、製品イメージや価格の回復は困難と言えます。

 また、特別価格で提供した先が継続的に取引をしている顧客の場合、「特別価格」を「通常価格」に戻すのは、交渉上、困難な局面もあり得ます。

 結局、特別価格を応諾できるのは、スポットの特注品などの場合に限られます。実際上は、非常に慎重な判断が求められます。

 更に言えば、特別価格で対応するのは、生産能力に余裕があるときだけの話です。一般に価格は、固定費も含めた総原価を上回る価格に設定しないと、最終的に投資の回収をまっとうできず、借入金を返済できなくなってしまいます。

 なお、実務への適用という点で視点を変えれば、この命題は製品を購入する際にも利用できます。先方の閑散期を見計らって、需要不足を穴埋めするような注文を出せば、価格の引き下げの余地は十分にあるということです。実際、多くの会社が、こうした発注の仕方でコスト削減を実現しています。


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