さて、企業の投資効率を示す代表的な指標としてROA(Return
On Assets:総資産利益率)があります。
ROAは、利益を総資産の金額で割って求められます。
ROA = 利益 / 総資産
ここで利益の金額としては、経常利益もしくは営業利益を用いるのが一般的です(専門的に分析する場合には、支払利息控除前の経常利益)。
日本企業では、このROAの低さが問題となっています。統計の取り方によってデータはまちまちですが、3〜5%という数字もあります。仮に3%だとしたら、100万円使って1年間で稼ぐ金額がわずか3万円。大きなリスクを抱え、寝食忘れて働いているにもかかわらず、これでは国債を買って昼寝しているのと大差がありません。
――●ROAを高めるには
では、ROAを高めるにはどういった手法が考えられるでしょう。
まず考えられるのが、利益率の高い商売をすることです。そのためには、付加価値の高い製品・サービスを提供し、製造や営業・管理などのオペレーションを効率化することが必要です。
もう1つは、資産効率を高めることです。投資⇒回収⇒再投資という循環プロセスの回転スピードを上げることです。薄利多売という言葉がありますが、取引1つ1つの利益は小さくとも、商品をどんどん回転させて利益を上げる機会を増やすことができれば、結果として利益は多く稼げます。
このことは、ROAの算式を分解してみれば分かります。
利 益 利 益 売上高
ROA = ――――― = ――――― x ―――――
総資本 売上高 総資本
<売上高利益率> <総資産回転率>
⇒収益性 ⇒効率性
上の算式は、売上高を介してROAを分解したものです。算式中、「利益/売上高」の部分は売上高利益率と呼ばれ、収益性の代表指標です。一方、「売上高/総資本」の部分は総資産回転率と呼ばれ、効率性の代表指標です。
ROAとは、収益性と効率性を包含した企業評価の総合指標なのです。
――●収益性か効率性か
さて、ROAは収益性と効率性という2つのファクターに分解できたわけですが、ここで注意すべきは、この2つは一般にトレードオフの関係にあるという点です。
収益性を重視するということは、いわばクオリティーを重視するということであり、製品・サービスの大量生産は望めません。一方、効率性で勝負するならば、品質に過度のこだわりを追求することはできず、まさに薄利多売の商売を目指さざるを得ません。
事業を行なう際には、収益性と効率性のどちらに重きを置くのか、また事業の性格上どちらが重視されるべきなのかを明確に意識にして、企業の特徴を打ち出していくことが求められます。