ROAや資本コストの項では、利回り思考の重要性をコインの表と裏から見てきました。利回り(投資効率)の考え方は、最近の経営の1つのキーワードでもあるので、多少の重複もあるかと思いますが、ここでまた整理しておきましょう。
――●投資とリターンの連鎖関係
まず、コインの裏表の関係を整理しておきましょう。
上図は、ベンチャー企業への資金の流れに着目して、コインの裏表の関係を模式的に示したものです。@からDのどの局面も投資とリターンの関係で結びついており、全体として連鎖の関係を形成しています。
たとえば今、ベンチャーキャピタル(VC)を中心に図を眺めてみましょう。ベンチャーキャピタルはベンチャー企業に投資し、その会社の
上場益により投資を回収し、リターンを得ます(図中のC)。一方でベンチャーキャピタルは機関投資家(銀行、損保等)などから資金を調達しており、これら投資家にリターンを提供する責務を負っています(図中のB)。
ここで図をさらに「後退」していくと、機関投資家は事業会社から資金の運用を委託されており、その事業会社は株主に対して儲けを還元しなければなりません。
翻って図をベンチャーキャピタルから「前進」すると、資金提供を受けたベンチャー企業は個別の投資案件(事業や設備)におカネをつかい、儲けを出して企業価値(ベンチャーキャピタルにとっては保有する株式の価値)を高めることで、ベンチャーキャピタルにリターンをもたらします。
結局、おカネがリターン(儲け)を求めて、この連鎖関係の間を行き来しているのです。
(現実の連鎖関係は、ベンチャー企業に直接個人投資家が出資するケースや、事業会社と個人投資家の間に法人株主が幾重にも介在する場合など、様々なパターンがあります。)