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(Q)資本コストを理解するポイントは?

 

(A)企業価値と株価の関係を正しく理解し、経営者は株価に責任を負っていることを理解することがポイント。

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――●株価が上がる・下がるとはどういうことか

 前の頁では、株価はその企業の企業価値を反映した「結果」であること、またそもそもその企業価値とはその企業が稼ぎ出す儲けの総和である、ということを理解しました。このことをもう少し押し広げて考えてみましょう。

 まず企業価値についてもう少し考察を加えてみましょう。繰り返すと、企業価値はその会社が中長期的(将来的に)稼ぎ出す儲けの総和がベースになります。ここで重要なのは、中長期的・将来的という部分です。

 先の話ですから、誰にも正確なことはできません。「将来的な儲けの総和」と言っても、所詮予測の世界でしかありません。逆に言えば、だからこそ株価は上がったり、下がったりするのだと言えます。

 これまでの議論をもとに考えると、株価が上がるというのは現在の株価が実際の企業価値よりも低いと判断されるから上がるわけです。過小評価されているからこそ、投資の妙味(儲けのチャンス)があるのです。反対に過大評価されていると株価は下がる。


――●株価は誰が決めるのか

 つまるところ、株価が上がるとは、その会社がもっと儲けを出すようになると予測されるときに上がるのです(逆に業績が悪化すると予想されると、株価は下がる)。ここまで議論を引っ張るのがおかしく思えるほど単純なことです。

 ですから、その企業の運営者である経営者が業績を(中長期的に)向上させれば株価は上がり、業績を悪化させれば株価は下がる。その意味で、もとをたどれば株価の決定要因はその会社の経営者に行き着きます(現実にカリスマ経営者の引退が発表されると株価が下がることもあります)。

 したがって、この項の最初の質問「株価は誰が決めるのか」の答えは、「究極的には経営者」ということができます(あくまで「答えの1つ」というのが正しい言い方でしょうが)。


――●何故、株価の値上がり益が「コスト」なのか

 では次に、株価と資本コストの関係について考えてみましょう。これについては、株主(投資家)の視点からものを考えてみることが必要です。

 投資家は、当然ながら儲けを期待してある会社の株を買います。ここで、株を買うことによる儲けは配当(インカム・ゲイン)と株式値上がりに伴う売却益(キャピタル・ゲイン)とに分けられます。ただ、投資家は要は儲かればいいわけですから、配当で儲かろうと売却益で儲かろうとその内訳は2次的な関心事になるはずです。

 しかし、現実の世界では株式の値上がり益目的で株を買うケースが大半でしょう。なぜならまず、短期のうちに売り買いをしようとすれば、配当のタイミングまで待っていられません。しかも、日本の場合、配当性向(利益のうち何割を配当に回すか)は一般に低いので、いきおい儲けの期待はキャピタル・ゲインの方に向くことでしょう。

 こうして株主が株式の値上がり益を期待している以上、経営者はそれに応える責務があります。何故なら経営者が期待に応えない場合、その企業の株は売られて信用を落とすか(極端なケース存立の危機に立たされることもあります)、その経営者が交替させれてしまうからです。

 さて、ここまでの内容を整理すると、株式の値上がり期待が資本コストになる理由が理解できるはずです。

 まず、資金を調達するにはその提供者(この場合は株主・投資家)に対して見返りが必要です。一方、投資家も見返り(リターン)を求めてその企業の株式を買います。このとき、投資家としては配当よりも株式の値上がり益に対する期待の方が大きい。また、株価というのは経営者がより儲けが出るように企業を導けば自ずと上がるもの。

 したがって、経営者というのは業績を向上させて企業価値を高め、その結果株価を上昇させることで株主の期待に応える、そうした責務を負った存在なのです。資本コストとはその責務の大きさを具体的な数字で表したものだと言えます。



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