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(Q)資本コストとは?

 

(A)借入や株式による資金の調達コスト。企業が達成すべき投資利回りの最低基準になる。

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 さて、ここまで資本コストの意義について述べてきましたが、最後に資本コストの計算や水準に関し、ポイントなるところを箇条書きにしておきましょう。

(数式を使った「計算」は多少技術的になるので、ここでは割愛します。別の項で扱っていますので、そちらをご覧下さい。)


――●資本コストの計算と水準

  • 資本コストとは、資金の調達レートのことである。資金調達は負債と資本によることから、全社の資本コストは、両者の調達レートの加重平均をとって算出する。
     

  • 負債の資本コストは、支払利息の金利である。ただし、支払利息は税金の計算上費用となるので、節税分を差し引いて考える必要がある。
     

  • 買掛金をはじめとして、負債の中には金利のかからない、したがって資本コストのかからない項目もある。
     

  • ここ数年、歴史的な低金利が続いているが、この水準が長く続くと思ってはならない。経営計画を立案する際には、負債の資本コスト上昇(金利上昇)を織り込んでおく必要がある。
     

  • 株式の資本コストは、株主がその会社の株式を買うことで何%の利回りを期待しているかを指す。
     

  • 株主が株式投資で期待しているのは、配当と株式の値上がり(による売却益)である。したがって、株式の資本コストは、配当と株価の値上がり益で構成される。
     

  • 株式の資本コストのうち、株価の値上がり益の部分は目に見えないコストであり、資本コストとして認識されないことがあった。このため、資本コストを過小評価してしまうことが日本企業ではしばしばあった。
     

  • 一般に、株式の資本コストは負債の資本コストよりも割高である。これは、企業が倒産した場合、債務の清算が優先され、株主は不利な立場に置かれる以上、株主はより高い利回りを要求するためである(加えて、負債の資本コストは、節税分が差し引かれるということもある)。
     

  • 資本コストの計算のベースにあるのは、「投資家は、リスクが高ければ求めるリターンも高くなる」という考え方である。したがって、リスクの高いベンチャー企業では、資本コストも割高なものになる。
     

  • 資本コストは数字の取り方によっていろいろな数値が計算されるが、一般に上場企業の平均は10%内外というデータもある。

 資本コストの技術的な計算はともあれ、資本コストを意識することは、現代の経営にとって極めて重要なことです(たとえオーナー会社であっても)。経営の基本である、投資とリターンの関係を理解し、必要なリターンの水準を認識することで、個々の経営行動は引き締まったものになるのです。



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