本文へスキップ
HOME 会計の基礎 財務の基礎 事業再生 ニュースで考える財務 弁護士のための会計・税務 提携先募集 事務所案内

(Q)現在価値とは?

 

(A)将来のキャッシュが現在のいくらに相当するかを割引評価したもの。

 1  2  3   ]
 

――●現在価値の示唆するもの

 複数の期間にまたがるプロジェクトの評価や企業価値全体を評価する際には、ここまで述べてきた現在価値の考え方をもとに将来における収入等を割引計算し、評価します。

 と、ここまではかなり教科書的な説明でした。しかし実際問題として、大企業の投資管理担当者以外で現在価値の割引計算を適用することはほとんどないでしょう。計算自体も技術的、理論的であり、ともすれば座学を修めた人間の自己満足になりかねません。

 では、私たちが「現在価値」を通じて学ぶべきところは一体何なのでしょう。
 

割引率
/期間

1年後

3年後

5年後

10年後

1%

0.99

0.97

0.95

0.91

3%

0.97

0.92

0.86

0.74

5%

0.95

0.86

0.78

0.61

10%

0.91

0.75

0.62

0.39

 上の表は、ある割引率・ある期間のもとでの現在価値がどれだけに相当するか(「現価係数」と言います)を示した表です。たとえば、割引率10%の下での、1年後における100万円の現在価値は (現価係数が0.91であることから)91万円と読みます。

 この表からは2つのことが読み取れます。1つは、期間が経てば経つほどキャッシュの価値は下がっていくこと、もう1つは、割引率が高ければ高いほどキャッシュの価値は下がっていくこと、です。割引率が高く、期間が長いと、その相乗効果で現在価値は極端に低いものになってしまいます(割引率10%のとき、10年後の100万円は、たったの39万円の価値しかありません)。

 ここで「価値が下がる」とは、言葉を換えれば、「アテにならない」ということを意味します。遠い先のことほど、またリスク(不確実性)が高いほど(割引率が高いほど)、将来の収入はアテにならず、評価が低くなってしまうのです。

 私たちはともすれば、将来をバラ色一色に描きたがるものです(そうでもなければ 会社経営などできないでしょう)。しかし、特に起業や新規事業の立ち上げ段階では事業の不確実性は格段に高く(立ち上げのプロセス自体が不確実性を下げていくプロセスだとも言えます)、客観的に見れば「アテにならない」状況なのが普通でしょう。

 起業 もしくは新規事業の立ち上げをするにあたっては、まず不確実性の存在を認識することが何より重要です。そして、その不確実性を認識した上で、自らの読みが外れた場合でも柔軟に対応できるよう構えをしておく(少なくとも心構えをしておく)ことにより、事業の存続可能性は高まっていくといえます。


▼次のQ&Aに進む