本文へスキップ
HOME 会計の基礎 財務の基礎 事業再生 ニュースで考える財務 弁護士のための会計・税務 提携先募集 事務所案内

(Q)企業価値 を高めるのにはどうすればいいのか?

 

(A)資本コストに注意を払いながら、営業利益の極大化や運転資本管理などによりフリーキャッシュフローを 増大させていくことが必要。

 1  2   ]
 

 前の項では、企業価値の評価計算について説明しました。ここでは、それを受けて企業価値を高める施策を考えてみましょう。それは、企業価値の計算過程・計算要素を振り返れば、自ずと答えが出てくるはずです。


――●フリーキャッシュフローの極大化

 企業価値で中心になるのは、事業活動からのキャッシュフローです。フリーキャッシュフローは更にいくつかの計算要素から構成されていましたので、それぞれの要素に着目してみましょう。

@営業利益の極大化
 これこそフリーキャッシュフロー、企業価値の源です。高い営業利益を維持するには、付加価値の高い事業運営を行なうことが必須です。「選択と集中」という言葉がありますが、得意分野に集中して付加価値の高い事業を行ない、さらにそれを極める努力を継続することで、中長期的にも安定した利益が見込めるものです。

A税金費用の極小化
 キャッシュフローで考えた場合、法人税等の税金費用は利益の4割強にも及ぶ大きなコストです。しかし、大企業の経営者はあまりにも税金費用の重要性を軽視してきました。損金不算入項目の見直しなど、合法的な範囲での節税策を積極的に検討すべきです。 海外展開している会社の中には税率も考慮したグループ運営も考えられるでしょう。

 ただ、オーナー会社などでしばしば見られる例として、利益が出て税金に持っていかれるのが癪なので、期末になって経費を使い出すことがありますが、これは考えものです。

 利益があれば、その半分以上のキャッシュは残りますが、利益をなくせばキャッシュは残りません。しかも、期末に作った経費は、その費用対効果を十分吟味せずに支出されることが多いので、無駄にカネを遣っただけに終わることも少なくありません。あまつさえ、納税を避けるために利益を圧縮した結果、銀行からの借入に支障が出るケースもあるのです。

B投資の厳選
 設備投資を行なう際には、資本コストを基にしたハードル・レートを設定し、それをクリアできる案件だけを採用するなど、収益性を重視した投資管理が必要です。

C運転資本の極小化
 売掛債権や在庫は、目を離すと膨張を遂げる性質をもちます。売掛債権に関しては、まず担当営業に回収責任があることを明確化させることが肝要です。その上で、請求管理や回収管理を徹底し、回収遅れや回収もれ(貸し倒れ)が生じないよう会社全体で努めることです。

 在庫についても、「在庫はキャッシュアウトを先行させるもの」という意識を社員に持たせることが重要です。日本企業では、生産量を増やして平均原価を下げ、在庫を積み増すことがしばしば行なわれてきました。それによって、見かけ上の利益は増え、工場の業績評価にも好都合だったからです。

 しかし、その実のところは単に不良在庫を製造し、損失を先送りしたに過ぎず、キャッシュフロー的には明らかにマイナスだったのです。意識改革とともに、業務プロセスの見直しや仕入・販売先との情報共有などによって、業務プロセス全体を通して在庫を縮減する努力が求められています。

 運転資本の管理に関しては、現場レベルで目標をもたせ、業績評価に反映させるようにするのが、実効性を確保する途です。


次ページに続く▼