――●投資キャッシュフロー
投資キャッシュフローは、企業の投資活動、すなわち設備投資によるキャッシュフローを指します。個人の例では、住宅の取得や株式の購入がこれに当たります。
企業の成長段階では継続的な設備投資が必要になるので、大きなマイナスが続くことは避けられません。
なお、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの合計を「フリーキャッシュフロー」といいます。ここで、「フリー」とは債権者や株主に「自由に」に分配できるという意味です。
――●フリーキャッシュフロー
フリーキャッシュフローは財務管理を身につける上で、非常に重要な概念です。何故なら、中長期的に考えるとこのフリーキャッシュフローこそが「真の利益」と言えるからです。
一般に「利益」と言うと、損益上の利益を考えがちです(あるいは、それをキャッシュベースに引き直した営業キャッシュフロー)。
しかし、企業が存続していく上で投資活動は欠かすことができません。投資を行なわない企業は競争力を失い、倒産へと続く縮小均衡の道を歩むほかないのです。
したがって、企業は営業ベースでの利益を確保するだけでは不十分で、投資活動に必要な資金も稼がなくてはならないのです。すなわち、営業活動によって獲得した資金を、投資活動につかってもなお余剰が出てはじめて企業は「儲かった」と言えるのです。
だからこそ、フリーキャッシュフローは「自由に」分配できる「儲け」たりうるのです。
――●財務キャッシュフロー
財務キャッシュフローは、企業の財務活動によるキャッシュフローを指します。具体的には、借入の実行や返済、社債の発行や増資などによる収支のことです。個人の例では、(住宅取得のための)銀行ローンがその典型です(借り入れた年はプラスで、以後、返済によりマイナスが続きます)。
この財務キャッシュフローは、フリーキャッシュフローを補完する存在です。企業における第一義的なキャッシュフローは、自ら稼ぎ出した儲けであるフリーキャッシュフローであり、財務キャッシュフローはいわばその帳尻を合わせるための存在なのです。
たとえば、フリーキャッシュフロー(儲け)で自ら資金手当てできているのに、わざわざ借入を行なったり、増資を行なったりする企業などないでしょう。
フリーキャッシュフローだけでは(自らの稼ぎだけでは)資金が不足するからこそ、借入や増資を行なうわけです。裏を返せば、資金不足では事業を継続できないので、何らかの方法で資金手当てせざるを得ない。それが、財務活動による資金調達なのです。
翻って、フリーキャッシュフローがプラスの状態を考えてみると、それはすなわち企業が「儲かっている」状況を意味するわけですから、資金の提供者たる株主や債権者は、投資資金の回収(儲けの分配)を要求することでしょう。
そこで、フリーキャッシュフローを原資として株主へ利益還元を行なったり、借入の返済をするのです。
(正確に言えば、借入については儲けが出ようが出まいが約定どおりの返済を求められることになります。このとき、フリーキャッシュフローで不足する場合には新たな資金調達によりとりあえずその場をしのぐことになります。
しかし、この新たな借入もいずれは返済せざるを得ず、結局は自ら稼ぎ出したフリーキャッシュフローで返済しないことには借入はクリアになりません。)