――●企業経営の目的
企業(経営者)は、投資信託のファンドマネージャーのような存在です。投資家(株主や債権者)は、投資目的で企業に資金運用を委託します。これを受けて経営者は、資金を株式や債券の代わりに事業活動(実物資産)に投資します。そして運用益を投資家に還元する見返りに、手数料(役員報酬)や成功報酬(役員賞与)を手にするのです。
結局のところ、企業経営とは投資活動そのものなのです。したがってその目的は、「リスクを最小にしながら、いかにキャッシュフローを極大化するか」にあります。
なお、ここでいうキャッシュフローは、投資家にとってのキャッシュフローですから、分配の対象(原資)となるフリーキャッシュフローを意味します。
――●フリーキャッシュフローを極大化するには
では、キャッシュフローを増やすにはどのようにすればいいのでしょう。その方法は、キャッシュフローの計算要素を振り返れば自ずと答えが出るはずです。フリーキャッシュフローは次のように計算されることになっていました。
・フリーキャッシュフロー=営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー
ここで、
・営業キャッシュフロー=会計上の利益+償却費−運転資本の増加額
これより、個別項目を検討していくと以下のとおりです。
@利益の極大化
中長期的に見れば、利益とキャッシュフローの動きは必ず一致します。利益こそキャッシュフローの究極の源泉です。事業の付加価値を重視し、経費節減に努め、税金費用を抑えることで利益は確保されます。
A運転資本の極小化
これまでの日本企業では、短期的な利益を偏重するあまり、運転資本の管理が蔑ろにされることがしばしばありました。製造単価を下げるために製品の大量生産を行い、結果、在庫の山を作ってしまうケースは頻繁に見られます。
キャッシュフローの点では、運転資本も利益と同じウェイトをもちます。この点を全社で十分に認識し、債権管理・在庫管理を徹底することが必要です。
B投資の採算管理の厳格化
日本企業の収益性の低さは、投資の採算管理の甘さにその原因が求められます。思い込みに走らず冷静に市場を見つめ、資本コスト(資本の調達コスト)を意識して投資を厳選すれば、無用な資金流出は抑えられます。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
これらの点を意識したとしても、企業の成長局面では、キャッシュフローがマイナスになることは必至です。しかし、「管理されたマイナス」と「なってしまったマイナス」とでは、その意味合いはまったく違います。
キャッシュフローを項目別に管理し、必要な施策を打っていくことで、企業は存続・成長を保つことができるのです。