§1フリーキャッシュフローの計算
――●フリーキャッシュフローとは
フリーキャッシュフローとは、その企業が本来の事業活動によって生み出すキャッシュフローのことを言います。ここで、「フリー」とは、企業が資金の提供者(金融機関や社債権者のような負債の提供者、及び株主である資本の提供者)に対して自由(フリー)に分配できるキャッシュという意味です。
企業はこのフリーキャッシュフローを原資として、債権者に金利を支払ったり、債務の償還を行い、あるいは株主に配当を支払ったり、株式の消却を行うのです。
――●フリーキャッシュフローの計算手順
企業価値の評価上、フリーキャッシュフローは以下のような手順で計算されます。
@税引後営業利益(NOPAT)の計算
まず、財務活動を除いた、本業のからの税引前利益(EBIT:Earning
Before Interest & Tax)を求めます。具体的には、経常利益に支払利息を加えて戻してやり、受取利息を差し引きます。次に、このEBITに法人税の実効税率をかけて税金費用を計算し、EBITから差し引きます。なお、こうして計算された税引後の営業利益をNOPAT(Net
Operating Profit After Tax)と言います。
A現金支出を伴わない費用の修正
償却費などのようにキャッシュの支払が生じない費用に関しては、これをNOPATに加え戻してやります。
B費用とならない現金支出の修正
設備投資などは、Aと反対に、費用ではないがキャッシュの支出を伴います。そこで、これらの金額をNOPATから差し引く必要があります。
C運転資本の増減による修正
売上と入金、あるいは仕入と支払いにはタイミングのズレがあります。また、在庫についてはBと同様、費用にはなっていませんが支払いの対象になっています。全体として、正味運転資本が増加する原因は、支払いが先行しているか、入金が遅れているかのいずれかです。つまり、運転資本の増加はキャッシュフローのマイナス要因です。そこで、運転資本の増減額をNOPATから差し引きます。
以上を要約すると、フリーキャッシュフロー(FCF)は次の算式で表現できます。
FCF=NOPAT+償却費−設備投資−増加運転資本
:NOPAT=EBIT[経常利益−受取利息+支払利息]x(1−実効税率)