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(Q)企業価値はどのように評価されるのか?

 

(A)売上に評価方法には様々あるが、将来のキャッシュフローの総額を現在価値に割引計算する、DCF(Discounted Cash Flow)法による企業評価がファイナンス理論上の評価。

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§3企業価値の計算


――●永続価値の計算

 企業評価の手順をおさらいすると、まずは将来のキャッシュフローを予測することになっていました。しかし、将来の業績を予測するといっても、建前上、企業は半永久的に存続するので、全期間の予測は不可能です。

 そこで、実務的には今後5年間(もしくは10年間)については利益計画をもとに毎年のキャッシュフローを計算し、6(11)年目以降はある成長率が永続するものと仮定して、その収束値を求めます(これを永続価値と言います。なお、事業によっては永続価値によらず、事業の存続期間を仮定してその間のキャッシュフローの現在価値を求めるケースもあります)。

 永続価値ΣPVは、現在のキャッシュフローCFが毎年g%で成長し、割引率である資本コストがr%である場合、次の算式で求められます。

      ΣPV = CF / (r-g)

 たとえば、現在100のキャッシュフローが毎年2%成長し、割引率が12%の場合、その永続価値は、
        100 / (12%-2%) = 1,000
となります。


――●事業外資産の処分価値の見積もり

 上記のキャッシュフローの予測は、事業活動から得られるキャッシュフローの予測でした。一方、会社には事業に関係のない資産(事業外資産)も存在します。たとえば、遊休地や有価証券(子会社株式などは除く)などです。これら事業外資産については、それらの処分価値を見積もって、企業価値の計算上、これを加えて評価します。ここで注意すべき点を2つ挙げると、

  •   処分価値は、キャッシュフロー上の価値であるので、税引後で考える必要がある。たとえば、簿価1億円、時価11億円の土地であれば、税率が40%とすると(諸費用はないものと仮定)、
       売却価額:11億円−税金:(11億円−1億円)x40% = 7億円
    で評価する。

  • 余剰現預金も事業外資産である。もし、10億円の現預金があり、うち事業運営上必要な資金が1億円であれば、9億円は事業外資産である。

 

――●企業価値の計算とその注意点

 事業活動から得られるキャッシュフロー、事業外資産の処分によって得られるキャッシュフローが計算されたら、有利子負債を控除して企業価値の計算が完了します。企業価値とは株主にとっての価値ですから、債権者の取り分は差し引かなければなりません。

(企業価値と株主価値を厳密に分けて考え、「企業価値」は負債控除前の価値、「株主価値」は負債控除後の価値とする場合もあります。)

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 以上が、DCF法による企業価値評価の基本的な流れですが、この手法についての若干の問題点・注意点をまとめると次のとおりです。

・非公開企業の場合、資本コストが計算できない
 非公開企業の場合、β値がないので直接的に資本コストを計算できません。詳細は割愛しますが、こうしたケースでは、公開している同業他社のβ値を基に資本構成の違いによる修正を加え、β値を推定します(なお、自社のβ値を用いる場合でも、現在の資本構成が目標とする資本構成と乖離している場合には、本来的には修正を加える必要があります)。

・将来に対する見積もりに依存するので、人によって評価額が大きく相違する
 これは、評価全般に通じる問題です。企業業績を完全に予測できる黄金律があれば、株式投資や企業経営は成立しません。ただ、完全予測は無理にしても、最善の見積もり(Best Knowledge)に向けて努力をするのです。業績の見積もりを複数用意して感応度分析を行なうなど、企業評価を点ではなく線形として、ある幅の中で推計していくのです。

 
また、実際にシミュレーションしていただくと納得されると思いますが、資本コストを1%動かしただけで、評価額はがらりと変わってきます。妥当な割引率に関しても、立場立場によって見方は違ってきますが、「ある幅の中の1点」という認識をもつことが大事です。

 企業評価に関して「絶対」・「正確」な評価はありません。重要なのは、最も妥当で、合理性を説明できる評価は何か、ということです。



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