――●固定費-変動費-売上-利益の関係
この項の2/5で、費用構造の異なる2社を取り上げて、売上が変化した場合の損益のブレについて説明しました。そこでは具体的な計算例は割愛していたので、A社の例で計算過程を補足説明しておきましょう。
まず、A社の売上100のときの費用構成を確認すると以下のとおりでした。
・固定費60、変動費20、総費用80
・限界利益率80%(=(売上100−変動費20)÷売上100)
ここで損益がトントンになるのは、「売上から変動費を差し引いた限界利益が、固定費と等しくなるとき」ですから、A社が損益トントンになっている状況では、
限界利益(=売上x限界利益率) = 固定費
∴損益分岐点売上高X x 限界利益率80% = 固定費60
これを損益分岐点売上高Xについて解くと、
損益分岐点売上高X = 固定費60 / 限界利益率80%
= 75
と求まります。
なお、損益分岐点の計算式自体は、
損益分岐点売上高 = 固定費 / 限界利益率
で簡単に求められます。ただ、ここでのポイントはこの「公式」を覚えることではありません。必要なのは、固定費−変動費(限界利益率)−売上−利益の間の相関関係を把握することです。再確認すると、
1)費用には変動費・固定費という性格があり、この性格を把握すること、意識することが何より重要である(勘定科目云々は、その次の話である)
2)固定費は売上がゼロでも否応なく発生する。「固定費先にありき」である。したがって、まずはこの固定費をカバーできるだけの限界利益(を作るだけの売上)が必要だ、という発想・感覚で事業運営をしていくことが求められる
3)カバーすべき固定費の額が少なければ、損益トントンになる売上水準(損益分岐点売上高)も低くて済む。また、限界利益率が高ければ、少ない売上でも固定費を回収できる(逆もまた真なり)
4)最終的な利益というのは、限界利益で固定費を回収した後の上積みである。固定費を回収できなければ損失になるし、ひとたび固定費を回収すれば利益はどんどん増えていく
5)限界利益の時点で赤字(売上よりも変動コストが高い)であれば、売れば売るほど損が出る。戦略的に行っている場合を除き、そうした場合には即刻その事業は中止されなければならない
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